ADHDの診断。

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注意欠陥・多動性障害(ADHD)について

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ADHDの診断

ADHDの診断のイメージ

 ADHDの診断は、国際診断基準であるDSMだけで十分です。面倒な心理検査は一切不要だと思います。

 例えば、WAISという知能検査をしても、実際は知能指数しか参考になりません。しかし、知能なら、少し話をするだけでも正常かどうかぐらいは、直ぐにわかります。

 また、知能指数ですら、ADHDの方や、小児では特に言語の遅れがあると20%ぐらいは低めにでるので参考程度にしかならないのです。

 言語性、動作性のIQの開きを云々して解釈したところで、所詮はただの推測にすぎません。確定診断からは程遠いのです。

 そもそも、ADHDはどこかで区切れるものでなく、正常(あるいは正常以上の優れた方)から、不注意や衝動・多動性(こちらは成人ではさほど問題にならないケースが多いですが)が極めて顕著な方まで切れ目なく連続していると私は考えています。

 ですから、学童期はさほど問題なく、むしろ知能が優れていて、優等生として活躍されていた方でも、複雑な大人の社会に入って、知能だけではカバーしきれなくなって不適応をおこされて悩まれたりし、自らのADHDの可能性に気づかれて当院を受診されたりするのです。

 どのようなことでもそうですが、物事は多角的、総合的にみて判断することが必要です。
ADHDの診断しかりで、精神科医にそのような力量がなければ話になりません。心理検査に頼って診断しているようでは、私にはむしろ頼りなく思えます。

 ところで、国際診断基準であるDSMに基づくADHDの診断に話をもどしますが、DSMの診断基準に従い、そのまま聞き取って診断すればいいかといえば、もちろんそんなに単純ではありません。診療・治療経験を十分に積んで、DSMを咀嚼して完全に自分のものにしていなければ正しい判断はできません。

 簡単な例をあげますと、たとえばDSMの診断項目の一つである「課題や活動を順序立てることがしばしば困難である」をそのまま聞いても患者さんはピンとこないでしょう。例えば、「優先順位を考えて仕事ができますか?」とか、「段取りが悪いという注意をよく受けますか?」というように聞き、その程度を患者さんの返答から聞き取らないといけないのです。

 そして、最後に各項目の重症度の総和やばらつきを頭のなかで集計して、総合的に判断し診断しないといけないのです。
もちろん、最初に、患者さんがどのような環境におかれ、どのようなことで悩んでいられるかを聞き取ることがきわめて大切なことは申すまでもないでしょう。

 このように、DSMを中心に使って注意深く聞き取れば、心理検査の必要性などは全く感じないでしょう。他の発達障害であるアスペルガー症候群との違い、あるいはその合併などについても十分に把握できるはずです。

 例えば、場の空気が読めないから単純に、アスペルガー症候群と診断するのは論外です。ADHDでも、集中の持続困難から会話のテンポについていけずに、また、そのことに対する苦手意識から十分な訓練がなされておらず、このような悩みを持たれる方も多いのです。また、マルチタスク(同時並行の作業)が苦手ですから、ADHDの方は多数の方との会話についていけず、急に話を振られるとその場にそぐわないおかしなことをいってしまうことがよくあるのです。アスペルガー症候群の話のニュアンスが汲み取れない、あるいは裏にかくされた意味が分からないこととは、質的に異なっているのです。

 そもそも、いろいろな心理検査などを行うより、合併症の有無やその重症度を丁寧に診るほうが大切だと私は考えます。

 ADHDは、特に双極性障害の合併が高率で、早ければ、中学生頃には双極性障害の合併がみられますから、特段の注意が必要です。勿論、心理検査をしてもこのようなことは分かりません。

 ナルコレプシーなどの過眠症もよく合併します。ADHDに双極性障害が合併した場合、双極性障害でも症状が進行してうつ状態が前景に出てくるようになりますと、過眠状態を伴うことがよくあります。ですから、ナルコレプシーなどの過眠症との鑑別を十分に行った上で治療にあたらないといけないのです。

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